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最近、現場や経営会議で最も頭を悩ませている問題といえば、「建設資材の異常なまでの価格高騰」ではないでしょうか? 「見積書を出した数ヶ月後には、もうその価格で材料を仕入れることができず、利益がどんどん削られていく……」このような厳しい状況だと思います。
今回は、なぜここまで資材価格が高騰しているのかという背景から、私たちの利益を守るために国土交通省が定めた「第三次・担い手3法」の価格転嫁ルール、そして今後の実務でどう対応していくべきかについて、分かりやすく解説していきたいと思います。
第1章:なぜ今、こんなに建材価格が上がっているのか?
まず、今の異常な物価高の背景を整理してみましょう。 記憶に新しい2020年の新型コロナウイルス感染拡大による「ウッドショック」等のサプライチェーンの混乱がすべての始まりでした。しかし、それだけでは終わりません。
近年では、2025年からのトランプ政権による関税引き上げ政策(保護主義の台頭)により、グローバルなサプライチェーンの分断・再編が進み、世界的に調達コストが跳ね上がりました。
さらに追い討ちをかけたのが、中東情勢の緊迫化です。ガザ紛争から波及した紅海やホルムズ海峡周辺での船舶への攻撃リスクにより、世界の海上輸送ルートは深刻な打撃を受けています。
スエズ運河を避けた喜望峰回りのルートへの迂回などにより輸送費は高騰し、原油価格も不安定な状態が続いています。これに長引く「円安」のダメージが加わり、現在、石油由来の製品である塗料やシンナー、塩ビ管をはじめとする様々な建材価格が急激に上昇しているのです(建設物価調査会)。
第2章:価格転嫁できなければ「黒字倒産」の危機も
かつての建設業界では、「一度ハンコを押して契約したのだから、後から資材が上がっても施工側が被るのが当たり前」という暗黙のルールがまかり通っていました。
しかし、今の異常な価格変動のスピードでは、そのやり方は絶対に通用しません。既に契約している工事や、これから契約する長工期の工事において、原材料高騰を反映させた請負金額の変更(価格転嫁)ができなければ、あっという間に利益が吹き飛びます。最悪の場合、仕事はたくさんあるのに資金繰りがショートする「黒字倒産」や、赤字工事の垂れ流しによる深刻な経営危機を招いてしまうのです。
第3章:国も本気で動いた!「第三次・担い手3法」の重要ポイント
このような事態を重く見た国土交通省は、建設業界の健全な維持・発展のために「第三次・担い手3法(建設業法等の改正)」を成立させ、価格転嫁に関する明確な規定を設けました。 ここからは、実務で絶対に知っておくべき3つのルールを解説します。(価格転嫁 – 第三次・担い手3法|国土交通省)
① 資材価格高騰時の「契約変更方法」の事前合意(明文化)
なんとなくの口約束はNGです。資材高騰に伴う請負代金や工期の「変更方法」を、契約書の「法定記載事項」として明文化することが義務付けられました。
これにより、「いかなる理由があっても契約変更は認めない」といった、受注者に一方的に不利な契約は法律上認められなくなりました。
② おそれ情報の提供(受注者からの事前アクション)
契約前に、資材高騰などのリスクを注文者(施主や元請)と受注者で共有しておくための制度です。天災や人為的な事象によって「資材の供給不足・価格高騰」や「労務費の高騰」が起こる「おそれ」がある場合、受注者から事前に通知をします。
【自然的事象の例】
ハリケーン等の大規模災害で、特定原料の世界シェアを握る工場が被災し、材料が出荷できず工期が延びるおそれがある。
【人為的事象の例】
中東などの紛争や急速な円安の影響で生コン価格が高騰し、金額変更を求めるおそれがある。または、半導体工場の建設ラッシュで専門職人が奪い合いになり、人件費増額をお願いするおそれがある。
★通知のポイント この「おそれ情報」は、単なる勘で伝えるのはNGです。国や業界団体の統計資料、報道記事など「客観的な根拠」に基づく必要があります。また、言った言わないを防ぐため、見積書交付時などに「書面やメール等の電磁的方法」で通知することが求められます(口頭のみは不可)。
③ 注文者の「誠実な協議対応」義務
受注者から「資材が上がったので金額変更の協議をさせてください」と申し出があった場合、注文者は必ず協議のテーブルに着き、変更の可否について説明しなければなりません。
【絶対にNGな対応】
- 正当な理由もなく、協議の開始自体を拒否する。
- 協議を申し出ているのに、意図的にズルズルと先延ばしにする。
- 受注者の言い分を十分に聞かず、一方的に否定して協議を打ち切る。
なお、「事前に『おそれ情報』の通知がなかったこと」だけを理由に協議を拒むことはできません。契約上の変更方法に基づいて、適切に話し合う必要があります。
第4章:現場で実践すべき具体的な追加対策
さて、ここからは法律の知識に加えて、実務で自社を守るための対策を2つご紹介します。
・「スライド条項」の積極的な活用
公共工事ではおなじみの「単品スライド条項」や「インフレスライド条項」ですが、民間工事でも契約約款に同様の規定を盛り込むことが非常に重要です。特定の主要資材が急騰した場合に備え、あらかじめ「どの指標をベースに価格見直しを行うか」を合意しておきましょう。
・下請け業者への「しわ寄せ防止」
元請が注文者から価格転嫁を認めてもらったなら、その恩恵は適切に下請業者や職人にも行き渡らなければなりません。下請からの協議申し出にも誠実に応じ、労務費の適切な引き上げを行うことが、めぐりめぐって自社の優秀な職人確保に直結します。
まとめ:情報収集と「対話」が業界を救う
現在のように先の読めない世界情勢の中では、適切な請負金額を維持し、質の高い建物を造り続けるためには、常に最新の資材価格動向を把握することが欠かせません。
そして何より大切なのは、注文者と受注者が「対立」するのではなく、同じプロジェクトを成功させるパートナーとして、適時かつ誠実に「対話・協議」を行うことです。 「第三次・担い手3法」は、その対話を促すための強力なルールです。制度を正しく活用し、適正な利益を確保して、共にこの厳しい時代を乗り切っていきましょう。
執筆者 T

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