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新年度の始まりである4月は、私たちの生活に関わるさまざまな制度が変わるタイミングでもあります。
特に、パートやアルバイトで「扶養内」を意識して働いている方、あるいは従業員のご家族を扶養に入れている方にとって、2026年4月1日から実施される「被扶養者の年収確認方法の変更」は、非常にインパクトの大きい改正です。
これまでの「ややこしくて、時として不条理だったルール」がどう変わるのか。難しい専門用語を噛み砕いて、これからの働き方にどう影響するのかを分かりやすく解説します。
1.なぜ今、ルールが変わるのか?
これまでの健康保険の扶養認定は、一言で言えば「各保険組合の判断に委ねられている部分」が大きく、基準が少しあやふやでした。
「去年の年収はどうだったか」「直近3ヶ月の平均はいくらか」「これから1年でいくら稼ぐ見込みか」といった要素を、各組合が独自の基準でチェックしていました。そのため、「繁忙期に残業を頑張ったら、その月だけ収入が跳ね上がり、一時的なものなのに扶養から外されてしまった」というケースが後を絶ちませんでした。
今回の改正は、こうした「バラつき」をなくし、「将来に向かって、契約上いくら稼ぐことになっているか」という一点にフォーカスを当てることで、基準を全国的に統一しようという試みです。
2.「実績」ではなく「契約」で決まる新しいルール
2026年4月1日からの最大の変化は、「労働契約(雇用契約)」の内容に基づいて扶養の判定を行うという点に一本化されることです。
これまでは「実際にいくら振り込まれたか」という実績が重視されていましたが、これからは「会社とどういう約束で働いているか」が優先されます。
「一時的な残業代」は原則として無視できる!
この変更による最大のメリットは、「突発的な残業代」が年収確認の計算から除外されることです。
新しいルールでは、労働条件通知書や雇用契約書に明記されている以下の項目から「年間収入の見込み」を算出します。
基本給(時給・日給など)
諸手当(役職手当、住宅手当など)
賞与(ボーナス)
通勤手当(交通費)
ここに、忙しい月だけ発生するような「残業代」は含まれません。つまり、契約上の想定年収が130万円未満であれば、たまたま残業が増えて実際の年収が130万円を少し超えてしまったとしても、原則として扶養から外されることはなくなります。
「扶養を外れたくないから、3月はシフトを削らなきゃ……」とビクビクしながら働く必要がなくなるのです。これは、現場の人手不足解消にもつながる大きな前進と言えるでしょう。
3.注意しておきたい「収入」の定義
「残業代が含まれないなら安心だ!」と手放しで喜ぶ前に、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
① 交通費は「収入」に含まれる
意外と盲点なのが、通勤手当(交通費)の扱いです。所得税の計算では、交通費は一定額まで「非課税」として扱われるため、お給料ではないと思っている方が多いのですが、社会保険(健康保険)の世界では、交通費は「収入」の一部としてカウントされます。
「基本給 + 交通費 + 賞与」の合計が基準額を超えないか、改めて確認が必要です。
② 「固定残業代」は除外されない
「突発的な残業代」は除外されますが、最初から契約の中に「月20時間分の残業代を含む」といった形で組み込まれている「固定残業代(みなし残業代)」は、契約上の収入としてカウントされます。
③ 判定基準の「年収」ライン
今回の改正でも、扶養に入れる年収のボーダーライン自体は変わりません。
一般(60歳未満): 130万円未満
19歳以上23歳未満: 150万円未満(※学生などの支援のための特例枠)
60歳以上または障害者: 180万円未満
特に、大学生や専門学生など「19歳から23歳未満」の枠については、以前よりも基準が緩和されているため、学生アルバイトをされているお子さんがいるご家庭は要チェックです。
4.手続きはどう変わる? 準備すべき書類
2026年4月以降、新しく扶養に入る申請をしたり、毎年の「検認(扶養の再確認調査)」を受けたりする際には、提出書類が変わります。
これまでのような「課税証明書」や「確定申告書の写し」といった「過去の証明」よりも、「今の契約内容」を証明する書類が重要視されます。
労働条件通知書 または 雇用契約書の写し: 時給、週の勤務時間、手当の有無などが明記された最新のものが必要です。
「給与収入のみである」旨の申立書: 副業や不動産収入、年金など、他の収入がないことを本人が署名して申告します。
もし現在、会社から労働条件通知書をしっかりもらっていないという方がいれば、早めに発行を依頼しておきましょう。これがあなたの「扶養を守る証明書」になります。
5.まとめ
今回の改正は、政府が進める「年収の壁」対策の大きな柱の一つです。
「働きたいけれど、扶養から外れるのが怖くてセーブする」という壁を、制度の側から取り壊そうとしています。
ただし、2026年10月には「106万円の壁(社会保険の適用拡大)」に関する賃金要件の撤廃、2027年以降は企業規模要件の撤廃なども控えています。これからは、単に「扶養を守る」ことだけを考えるのではなく、「あえて社会保険に自分で加入して、将来の年金受給額を増やす」という選択肢も、より現実的でポジティブなものになっていくでしょう。
ルールがシンプルになった今こそ、ご家族で「いくら稼いで、どう暮らしたいか」を話し合う絶好の機会かもしれません。
参考URL
労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取り扱いについて(日本年金機構)
労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A(厚生労働省)

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